Political Economy & Economic History Society

政治経済学・経済史学会


春季総合研究会
Spring Meeting

-
日  時 2014年6月28日(土)、13:00〜17:00
会  場 東京大学本郷キャンパス・経済学研究科棟・第1教室
テーマ 第一次世界大戦開戦原因の謎 国際分業が破壊されるとき(ポスター
報告者と論 題 1.小野塚知 二(東京大学)「第一次世界大戦開戦原因の謎:問題提起」
2.馬場優(福岡女子大学)「第一次世界大戦前ヨーロッパの外交関係と開戦原因」
3.左 近幸 村(新潟大学)「第一次世界大戦前ヨーロッパの経済的相互依存関係と開戦原因」 図1、 図2、 図3、 表1、 表2
4.井野瀬久美惠(甲南大学)「第一次世界大戦前ヨーロッパのナショナリズムと民衆心理」
コメント 1.河 合 康 夫(武蔵大学)「さまざまな帝国主義論と開戦原因」
2.渡 辺 千 尋(東京大学)「さまざまな平和主義思想と開戦原因」
3.浅 田 進 史(駒沢大学)「開戦原因論と植民地獲得競争」
司  会 竹内真人(日本大学)・高田馨里(大妻女子大学)
注  意 ダウンロードした報告原稿等を著者に無断で引用することを禁止します。
趣  旨  第一次世界大戦は、それ自体が大きな災厄であり、さまざまな意味で不可逆的な変化であっただけで なく、その後の大恐慌、第二次世界大戦、冷戦の原因ともなり、「短い20世紀」全体を規定したできごと であった。また、1870年代以降開戦直前まで維持された世界経済の緊密な相互依存関係を分断し、この 相互依存の中で可能であった安定的かつ多角的な発展の型を瞬時に解体したという意味では、戦争が常 に外交の失敗であるという以上に、史上まれに見る深刻な大失敗であったということもできよう。
ところが、これほどの大事件であるにもかかわらず、それが発生した原因については意外なほどに貧弱な解釈しか用意されていない。政治外交史の実証的な研究によって、第一次世界大戦がいかに始まっ たかについてはさまざまな知見が蓄積されてきた。しかし、そこで描かれる各国の政治指導者の姿は、戦争に突入することへの逡巡と躊躇がありながらも、否応なく開戦に向かって押し流される  --滑りやすい坂道(slippery slope)あるいは蟻地獄から這い上がれない --様子ではあるが、なぜ、そのような坂 道にはまり込んでしまったのかは必ずしも明らかにされていない。
 同盟外交が、同盟外諸国との外交的可能性を制約するとともに、開戦の心理的コストを低下させたと いう点で、開戦の副次的要因であったということはできるものの、開戦しなければならなかった決定的 な理由は同盟外交からは説きえず、しかも、同盟関係にしたがって参戦しなかっただけでなく、一年余 の打算の末に敵側についたイタリアという重大な例外もあるから、開戦原因としては充分ではない。
 わが国の西洋史学や歴史教育で通説の位置を占めるのは、帝国主義諸列強の対外膨張策の衝突が嵩じ た結果、第一次世界大戦にいたったという説で、ホブスンやレーニンの帝国主義論を下敷きにした開戦 原因論である。しかし、帝国主義諸列強の対外進出がいつも紛争をともなっていたわけではなく、摩擦 が発生してもそれらは外交的に解決されたし、植民地の経済的実態は宗主国以外にも開かれており、そ して何よりも、開戦の直接的な原因となったサライェヴォ事件は列強間の衝突ではなく、オーストリア= ハンガリー帝国のボスニア・ヘルツェゴヴィナ併合やバルカン戦争などの結果発生した、バルカンの、 またオーストリア=ハンガリー帝国内の民族対立の一つの表現であった。
 1907年恐慌以降、金融的な脆弱性を露呈したドイツ帝国主義が、英ポンドを基軸通貨とする国際通貨 ・金融システムに挑戦を始めたことが対立激化の経済的な背景であるとする説(吉岡昭彦)もあるが、で は、大戦前の国際通貨・金融システムには戦争によってしか解決しえないいかなる問題が内包されてい たのであろうか。他方で第一次世界大戦前の相互依存的で高度にグローバル化した国際経済に注目して、 国益の対立、国境と関税・貿易障壁、ましてや戦争は、過去の幻影に過ぎないと理想主義的な平和論を 唱えた人物もいたが(Norman Angell, The Great Illusion, 1910)、この説はそれが発表された数年後に実 際に大戦が勃発することによって簡単に覆されてしまった。では、相互依存的でグローバルな経済は、 なにゆえ、かくも簡単に戦争によって崩壊してしまったのだろうか。相互依存的な国際分業の展開した 経済は平和の条件にはならないのだろうか。
 第一次世界大戦前に頂点に達した相互依存的経済の中で世界各地は持続的な経済発展を遂げるが、国 際分業の深化は必然的に、どの国にも相対的な衰退産業・衰退地域や失業の発生をもたらした。繁栄の 中の衰退という現象は、ことに社会主義が勢力を増しつつある中では、特別な解釈を必要とし、その最 も安易な解釈は、衰退を他国=外敵のせいにするナショナリズムによって提供された。第一次大戦前の 欧州諸国の政治家は国内の矛盾や軋轢を回避し糊塗するためにナショナリズムを利用したのであるが、 ナショナリズムはそれによっていかに蔓延し、また政治にいかなる反作用を及ぼしたのであろうか。
 現在の東アジア・東南アジアの経済は非常に密接で切り離しがたい関係にあるが、他方で東アジア諸 国の間にはさまざまな外交的・軍事的な問題と民衆心理上の反感・不信感がくすぶっている。経済的な関 係が緊密なら友好的な国際関係が築かれるとの、第二次世界大戦後の通り相場となっている信念は本当 に正しいのだろうか。平和と国際分業はいかなる場合に壊れるのかを、百年前の第一次世界大戦勃発と いう事実に即してあらためて検討するのが、今年の春季総合研究会のねらいである。学会外からの協力 もえて、第一次世界大戦の開戦原因を学際的かつ総合的に考察する場としたい。
*6月20日前後に各報告・コメントのフルペーパーが学会ホームページに掲載される予定です。事前にご参照のうえ、ご参加下さい:http://seikeisi.ssoj.info/Spring-Meeting14.htm
**お問い合わせは政治経済学・経済史学会事務局まで:seikeishi「@」gmail.com

-